家系図探訪人

家系図や、養子縁組に興味を持っています。史料としては主に新訂寛政重修諸家譜を用います。Twitter:@rekishi290

徳島藩(3)藩主蜂須賀氏一門について

 今回で、徳島藩関係の記事としては最後です。徳島藩主蜂須賀氏一門・公族について述べます。

蜂須賀重隆流

 重隆─隆穀─隆寛=休栄(休光子)─隆実=隆芳(昭順子)

 世数は『蜂須賀家記』に準拠。重隆長男で中老になった喜憲は重隆より先に亡くなっているためか世数に含まれていない。重隆は隆寿の子で、正勝─家政─至鎮─忠英─隆矩─綱矩─隆寿─重隆と、藩祖・蜂須賀正勝以来の男系子孫である。3世隆寛に男子なく、男系は途絶えた。

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 ところで、6代目の隆芳の娘の斐は、最後の徳島藩主・茂韶に嫁いでいるが、なかなか数奇な血筋である。というのも、上図のように、藩祖正勝の血と、他家から養子に入った宗鎮と重喜の血が入っているのである。残念ながら茂韶との間に子はできず離婚しているが、もし子ができていると、正勝、宗鎮、重喜、斉裕と、徳島藩歴代の血を引く後継者となっていただろう。あるいは、隆芳と正室の間に生まれた男子が夭折していなければ、蜂須賀家の分家として男爵あたりになっていたかもしれない。

なお、後述するが、蜂須賀隆芳の兄弟の昭徳、昭融は昭順系の当主であり、弟の休尉は宗鎮の子の休光流の当主であることから、重隆流の血族が宗鎮流の休栄、隆実の後に重喜流の隆芳を迎えているように、宗鎮子の休光流もまた、重喜流の血族に置き換わっていったのが興味深い。

蜂須賀休光流

 休光─休紹=休尉(昭順子)

 休光は宗鎮隠居後の重喜の時代に生まれている。休光の子として、成之(夭折)、池田昭訓、俊英(夭折)、休栄(重隆流・隆寛養子)、休紹がいる。

 なお、『武藤文書』に蜂須賀次郎が養父・休尉三年祭の礼状を出している記録が残っているため、休尉以降は養子を迎えて続いたようである。 

蜂須賀重喜流

 ここでは蜂須賀重喜の男子を列挙する。

長男・治昭

 徳島藩主を相続。

 

次男・喜翰

 喜翰は家老となり、以後

 喜翰─喜周─喜共=喜文(喜翰子)─喜心

 と続く。

 蜂須賀喜心の子に猪熊信男がおり、研究者として名高い。

 

三男・喜和

 蜂須賀喜和の子の信近は立花姓を称し藩士となった。立花姓の由来は喜和の生母が立花氏出身の伝姫(柳川藩主立花貞俶の娘)であることから。

 立花信近、和享、近義と続き、明治4年11月、立花家3代目近義のとき蜂須賀に復姓している。

 なお、姓を戻した蜂須賀近義は自由民権運動で精力的に活動していたようで、民権派の『普通新聞』の編集長を務め、明治10(1877)年6月に禁獄3月、罰金70円、9月に禁獄2月、罰金20円を科せられた記録が残っている。

 

四男・喜儀

 喜儀は家老となり、以後

 喜儀─喜修─喜熈─喜永

 と続く。

 

五男・義功

 允功とも。義功以後、

 義功=喜端(重喜十男)─喜軌

 と続く。

 

六男・喜寛

 允迪とも。中老格。

 

十男・喜端

 允澄とも。兄である義功養子。中老格。

 

十三男・昭則

 中老格。

 

十四男・昭義

 中老格。

 

十六男・昭栄

 中老格。

 

七男・喜粛、八男・喜泰、九男・喜敦、十一男・允穎、十二男・喜之、十五男・喜道

 早世。

 

蜂須賀昭順流

 昭順は治昭三男。昭順以後は

 昭順─昭徳=昭融(昭順子)

 と続いた。

 昭順の子として、昭徳、隆芳(重隆流・隆実養子)、藤堂高潔室(本家・斉昌養子)、休尉(休光流・休紹養子)、昭融(昭徳養子)、池田永孝室がいる。

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 先述のとおり、結果として重隆流、休光流の当主が重喜の孫である昭順の子になったというのが面白い。幕末期に活躍した昭順、隆芳、休尉、池田昌豊が縁戚関係にあったわけだ。もっとも、前回に稲田・賀島家が重縁関係にあったことは述べたが、上流階級となると縁組先も限られてくるために必然的にそうなるのかもしれない。

 明治期に蜂須賀昭邦、昭寛の名が見えるが、昭順の系統なのか、治昭の弟の昭則らの系統なのかは不明。 

あとがき

 今回は蜂須賀家の一門・公族について述べた。家臣に降りた者の子孫の調査は容易でないが、徳島藩が大藩であることと、子沢山の重喜を除いては子も多くなく(養子相続が多い所以でもあるが)、大藩相応の史料があり、しかもその史料がWeb上で多数公開されているために非常に調査しやすかった。

 裏を返せば、少しネットで調べれば出てくる史料をWikipediaの記事を書いた人は参照していないんだろうかとも思う。蜂須賀隆芳の記事と、蜂須賀氏の系図の部分は書き直した方が良いと思われる。昭順の記事も新たに出来れば言うことはない。

参考文献

 『蜂須賀家記』⋯歴代の子が列挙されています。

蜂須賀家記 - 国立国会図書館デジタルコレクション

 『阿波国徳島蜂須賀家文書』⋯系譜や歴代の事績だけでなく、絵図やあらゆる記録が閲覧可能です。

阿波国徳島蜂須賀家文書簡易検索

 近世大名(蜂須賀家)家臣団家譜史料データベース⋯徳島大学附属図書館所蔵の「蜂須賀家家臣成立書并系図」を画像データベース化したもので、稲田・賀島(加島)家など家臣団の系図を検索できます。

近世大名(蜂須賀家)家臣団家譜史料データベース

 

徳島藩についての第1回と第2回記事は下記から閲覧してください。

genealogy-research.hatenablog.com

genealogy-research.hatenablog.com

 

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